ペットの肖像画制作のご依頼と、その記録、絵のお話など‥
こんにちは。今日は、私が描きましたワンちゃん(犬)の肖像画のお話をさせて頂きたいと思います。
ご依頼を頂き、以前より制作を致しておりましたガジュマル君の油彩画が完成を致しました。そして先日、飼い主様であるK様に、ガジュマル君を無事にお渡しする事が出来ました(#^.^#)
そのK様から、今回の肖像画制作ご依頼のお話や、ガジュマル君の事、そして私の制作のお話等、是非ブログにてご紹介して下さいとの大変嬉しいお言葉を頂戴致しましたので、
今日はそのエピソードと合わせて、後半には私の油彩画の制作過程もご紹介させて頂きます。
上の画像は、画架(イーゼルの事を日本語で画架と言います。絵を描く為に乗せる台の事です。)の上でのガジュマル君。完成の風景です。
このお作品は油彩画(油絵)で、サイズはF6号、木枠に張ったキャンバスに描いています。
今回のご依頼は、K様より、大切なご家族であるガジュマル君の肖像画を‥との事でございました。
ガジュマル君はシーズー犬の男の子。昨年の9月、ご家族の元で14年の天寿を全うされました。
K様ご家族が愛する彼の絵を描かせて頂ける事は、絵描きの私にとって、とても光栄な事でした。そして、同時に緊張も致しました。
実際にガジュマル君には会った事があるものの、一度だけしかございませんでしたので、制作にあたり、彼の仔犬の頃から、ごく最近までのお写真をお預かりさせて頂きました。
その時初めて知ったのですが‥‥、シーズー犬って、ヘアースタイルのカットの仕方によって、もの凄く印象が変わるんですね!ビックリ致しました。(゜o゜;)
毛の切り方で、まるで別人(別犬?)になるんですね(笑) 凄~く長かったり、裸の様に短かったり‥‥。
その変わり様があまりにも激しくて、一体、どの毛の長さが 【The ガジュマル君】 なのか分らず、K様と長らく談笑をさせて頂きました。
実際、K様も『いつもボサボサな感じで‥』 とおしゃって、ご家族様でもコレとのご判断が難しいご様子でした(^_^;)
私は、自分の描く 『肖像画』 は、 『似顔絵』 や 『実物のそっくり絵』 には決してなってはならないと自分の心に語り、描きます。
見つめる対象が人間であっても、動物であってもその気持ちは変わりません。
このガジュマル君についても想いは同じで、『ガジュマル君に良く似ている絵』 になりたくないと思いました。
そして、もっと正確にお話致しますと、実は、本当は 『絵』 や 『作品』 にもなって欲しくないと思っています。
その人、その動物、ガジュマル君ご本人(ご本犬?)になって欲しいと思っているのです。
ご存命の方の肖像は、その美しいお姿をまたここにも。
そして、ガジュマル君の様な今は身体を無くした方には、その魂がもう一度安住出来る場所を。
私には、神様がお造りになられた美しい、完璧で精巧な身体は造る事が出来ません。でも、おこがましい事ですが、絵描きには絵描きにしか出来ない事も有ると思っています。
拙い手ですが、一生懸命、心を込めて向えば、きっとその想いは叶うと信じて描きます。
これから、愛するご家族の元でまた新しい日々を重ね、本当のガジュマル君になってくれる事を願っています。
K様、この度は素晴らしい機会を頂き、本当に有り難うございました。改めて心より御礼申し上げます。
ご家族皆様のご健康とご多幸を、お祈り申し上げております(#^v^#)★
さぁ、ここからは制作日記です!
それでは順番に制作過程をご紹介致して参りますね。
いきなり動く画像で驚かせてしまいましたでしょうか?(*^_^*;)
今回、制作作業の合間合間に、写真を撮っていきました。私にとっても初めての試みです。
今までこの様な事を致した事がございませんでしたので正直戸惑いましたが、纏めて見たらきっと面白い筈!と思いながら撮影を続けていきました(笑)
先ず初めは下描きです。F6号のキャンバスに地塗りをし、そこに直接、木炭で描いていきます。
(※ 地塗りとは、絵の具の乗りを良くする為に施す、キャンバスへの下塗りです。地塗りは施さなくても全く問題なく描けます。
作家さんによっては真っ黒な地塗りをする方もいらっしゃいます。因みに私はアイボリーホワイトで地塗りを行っています。)
この木炭描きの時に、殆どの構図を決定してしまいます。
構図が決まったので、次はこの木炭の線を元に、油絵の具のブラック(黒色)で、もう一度デッサンをしていきます。
乾いた地塗りの上に、再び油絵の具を重ねていく際は、描く前に画面に必ずルツーセを塗布します。
このルツーセの必要性をご存知無く油彩画を描かれている方が多くいらっしゃいますので、どうかご注意頂き、覚えていて下さいね。
尚、地塗りのしていない、購入したままのキャンバスの状態でしたら、描き始めにルツーセは必要有りません。
このルツーセとは簡単にご説明を致しますと、乾いた絵の具と新しい絵の具をくっ付かせる為の接着剤です。
乾いてしまった絵の具には、次の絵の具は乗ってくれません。もし乗っても、乗っているように見えているだけで、実際には接着しておらず、後々になって絵の具が剥落してしまいます。
スプレー缶に入ったスプレー式のものと、塗布用にビンに入ったものが市販されています。
小さな範囲の作業にはスプレー式を、大作等の広範囲に必要な場合は塗布用の瓶入りを使用致します。瓶入りのものは刷毛や筆で画面へ塗布します。
因みに、今は使われている方も少ないと思われますが、スプレー缶の無かった昔は、ストロー式になった筒状の道具にこの液を入れて、自分の息で吹き付ける方法でも使用されていました。
何だか、ルツーセのご説明だけで疲れてしまいましたね‥(笑)
ルツーセは、ややこしそうで、特別難しい事でも面倒な事でも有りませんので、大げさには考えないで下さいね(*^_^*) ごく普通の制作の上での習慣だと捉えて下さい。
さぁ、色を置いていきますよー★
絵の具を置いたので、少し身体に体重を感じる様になりました。
花や空にも色を置きました。これで、凡その雰囲気を掴みます。
そして、ここから形を修正しながら構図を整え、自分の求める色も追求していきます。
ここで大切な事は、最初の段階から、ちゃんと光と陰で描いていくと言う事です。
『陰は後で付けよう』 は駄目ですよ!
瞳がちょっと大きくなってしまいました。
K様にも御確認を頂きましたら、やはり目がガジュマル君ではないとのお答えでした。
これから瞳を直していきます。
これで漸く一安心‥‥(^_^;)
背景のポピーの花を少し増やしてみました。
お顔もほぼ決まりました。
あとは毛並みや背景をさらに整えていきます。
少し背景のポピーが、主役のガジュマル君の邪魔になってきましたので、数を少し減らす事に致します。
足元の地面に草も生えました。控えめに入れていた瞳の光が弱かったので、最後に強くしました。
サインを入れて、無事に完成です(#^.^#)
余談ですが、先に少しお話いたしました様に、このガジュマル君は 『絵』 ではなく、ガジュマル君そのものであって欲しいと願っていましたので、
サインを入れるのは控えようかなぁ?と一時考えておりました。
それをK様にお話致しましたところ、『サインは絶対に入れて下さい!』 と仰られて、絵描きの我に返りました(笑)
折角の機会ですので、アップでも撮影してみました。どうぞ。
もっと見つめちゃいますよ!(笑)
アップにしたら、筆の毛を発見‥‥。これもご愛嬌と言う事で(^_^;)
毛のモサモサ具合も、K様にご確認を頂き、お墨付きを頂戴致しました(笑) 良かったです。
ガジュマル君がご自宅へ帰る前に、アトリエの壁で記念撮影をさせて頂きました。
これは必要ないのかも?とも思いましたが、ご参考になると思われますので、私のパレットもどうぞ。
パレットへの色の置き方が分からない方は是非ご参考になさって下さい。この様に配置すると作業が捗り、使いやすいですよ(^_^)
真ん中に白色の絵の具を置きます。こうする事で、白色がどの色とも仲良くなってくれます。
はい。今回は本当に長かったですね‥‥。ここまでお読み下さいました方、本当にお疲れ様でした。
制作過程のご紹介は初めての経験でしたが、如何でしたでしょうか?(^^;ゞ
また機会を得て、時々公開出来ればと思います。
この度はK様、そして最後までお付き合い下さいましたあなたに、心より有り難うございました★☆ミ